1 うこぎのほろほろ

 石割桜が咲いて、公園の石垣にマンサクの黄色が映えて。風景に春を探すのと同じくらい、盛岡の人が楽しみにしている旬の食べ物「うこぎのほろほろ」を知っていますか?

 うこぎの新芽を摘んでさっと茹でて細かく刻み、くるみと味噌大根のみじん切りと和えます。あとは炊きたてご飯にかけるだけ(できるだけ豪快に!)。立ち上る湯気とうこぎの香り、口に含むと広がるほろ苦さ。胃袋で「春が来たぁ」と感じます。

 味は味噌大根の量で加減して、くるみの食感はアクセント。「うちはクルミ多め」「味噌大根は○○○のに限る」とか、家ごとのレシピも存在します。個人的には味噌大根多めが好き。血圧は気になりますけど、しょっぱいほうがご飯が進みますもんね。

 「聞き書 岩手の食事(農文協刊)」によると、南部藩士が食べようとして箸からこぼれ落ちた様子から名がついたと書かれていますが、よく考えれば「ほろほろ」に「あつあつ」ご飯、味噌大根とクルミの「カリカリ」と、オノマトペだけで美味しさが成立してしまうのが楽しい。

 明快かつ豪快な春の味。さあ、ご飯を「わしわし」かきこみましょうか。

※いわてFOOD記 第1回 マ・シェリ931号(2014年04月25日)掲載

食のほそみち

2014年からマ・シェリに連載中

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