1 豆しとぎ
煮て半つきにした青大豆の香りと食感、そして米粉と砂糖による薄ぼんやりとした甘さ。寒い季節になると出回る「豆しとぎ」が好きです。
穀粉や砂糖をしとねるだけという製法は干菓子にも通じますが、ここに豆が入ることでグッと複雑になるのが豆しとぎの真価。サクサクした歯触りもあんこのような滑らか食感も、豆の煮方ひとつ、つき方ひとつで変えられる。米のかさ増しで豆を入れたという説もあるようですが、そのおかげで東北以外では味わうことの出来ない菓子が誕生したわけです。
この時期は産直などでよく見かけますが、思い出すのは、盛岡の行商おばあちゃん・木村ゴヨさんの売っていた豆しとぎ。早朝に八戸で仕入れ、寒い大通りの路端に並んだ豆しとぎは冷たくて、でもとても滑らかだった。今も大通を歩くたび、あの豆しとぎの味がよみがえります。
※食のほそみち 第1回 マ・シェリ956号(2014年12月26日)掲載
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