8 くるみ味

 先日沿岸出身の人から、宮古では正月のお雑煮をくるみだれで食べると聞きました。しょうゆのお澄ましに浸ったお餅を、砂糖入りのくるみだれに付けるとな? 驚きつつも、その味に心そそられる自分がいました。
 宮古ほどのインパクトはありませんが、内陸にもくるみを使った食べ物が数多くあります。定番のくるみもちをはじめ、名物のお茶もちもたれにくるみがたっぷり入ります。郷土食のバイブル「聞き書 岩手の食事(農文協刊)」にも、芋の子のくるみじょうゆ和えやぜんまいのくるみ和え、くるみひっつみにくるみごはん等々、とにかくいろいろなくるみ料理が出ています。刻んで摺って、しょうゆでのばしたり砂糖も入れたりと濃厚な風味を楽しむ工夫は、当時の暮らしの中で、くるみがいかに「ごちそう」だったのかを教えてくれます。
 とても素敵な言い回しがあります。
 「くるみ味がする」
 食べ物がおいしいことを、昔から沿岸ではこう言うそうです。だんごでも魚でもご飯でも、おいしければ「くるみ味がする」。こんなふうに言われたら、誰だって食べてみたくなるでしょう。そんな「くるみ味」を求め、これからも岩手を食べ歩きます。
※いわてFOOD記 第8回 マ・シェリ953号(2014年11月28日)掲載

食のほそみち

2014年からマ・シェリに連載中

0コメント

  • 1000 / 1000