38 戸田久餅店の花まんじゅう

 はーるよこい、はーやくこい。こんなにも春が待ち遠しい冬はひさびさです。雪かきに雪道の運転に、へとへとになった心と体へのごほうびには甘いものでしょう。盛岡市の戸田久餅店で、春らしい餅菓子「花まんじゅう」を見つけました。
 まずはその、素朴でキュートな風貌に目がいきます。柔らかいしんこ餅につけた緑と赤の斑点は、雪原に開いた花のよう。真ん中に乗ったクルミは森のリスの忘れ物でしょうか。乙女心をかきたてながらかぶりつくと、戸田久餅店自慢の粒あんが口の中に広がります。「クルミの味もするでしょ」と笑うのは大女将の戸田トシさんで、50数年前に嫁いできたとき、新たな店の名物にと自ら作ったのがこの花まんじゅうだそう。雛の節句、郷里の母が作ってくれたトシさん思い出の味は、今では市内のみならず多くの人に愛される逸品になっています。
 お店では通年買うことができますが、せっかくならお雛さまと一緒に愛でてみたいお菓子です。
■戸田久餅店 盛岡市本町通1‐9‐43 電話019(651)0712 ※食のほそみち 第38回 マ・シェリ1070号(2017年02月23日)掲載

食のほそみち

2014年からマ・シェリに連載中

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