6 白鳥クッキー

 「昔から、どんな形のものでも作ってみたくなる性分。白鳥の姿も、頭の中にすっかり入っているのさ」
 笑顔でそんな台詞を決めてしまう、稲葉重利さん。ベテラン菓子職人の一言にのっけからやられてしまいました。う~ん、かっこいい…。
 そんな稲葉さんの作るお菓子「白鳥クッキー」は、乙女心をわしづかみにする可愛らしさ。こんもり丸い羽根も優雅な首のラインも、おとぎ話に出てくる白鳥みたい。しかもこれ、よくある型抜きクッキーではなく、クリーム用絞り袋で1個1個天板に絞り出して作っているのです。
 絞り始めは尻尾から。生地を袋に詰め、「1・2・3」と10絞りで白鳥のボディ。首のカーブを一気に絞ったらくちばしを手で整え、息子の道利さんが目を入れオーブンで焼き上げます。この手間ひまゆえ、多くて1日120個程しか作れないのだとか。
 工房を構えて58年。和菓子も洋菓子も作る重利さんはアイデアマン。ナマズからハニワ(!?)まで、これまで手がけた創作菓子はキリがありません。「作るのが楽しいから大変なことはないね~」と笑います。
 白鳥といえば冬の使者。寒いのがてんで苦手なのでまだお会いしたくはありませんが、こんな可愛い白鳥ならいつでも大歓迎! なのです。
●問い合わせ/いなば菓子舗 北上市下江釣子11‐77‐1 ※工場のみ 電話0197(73)5052 ※いわてFOOD記 第6回 マ・シェリ947号(2014年09月26日)掲載

食のほそみち

2014年からマ・シェリに連載中

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