9 みそ大根

 しょっぱいもんが食べたい。
 猛暑だからでしょうか、この夏は塩味の食べ物がたびたび恋しくなりました。
 なんだかんだ言っても、しょっぱいおかずは最強のご飯の友。特に麹屋もとみやの「みそ大根」は奈良漬と見まごう色艶なのにガッツリと塩辛く、ついついご飯が進むキケンな代物なのです。
 「昔の年寄りがやっていた漬け方だから」。さらっと話す本宮隆一社長ですが、その手間ひまがとんでもない。下処理した大根を旨味の強い三年味噌の漬け床に2年から3年、しかも最低4回は漬け床を換えるそうだから。そもそも味噌仕込みの副産物だった味噌漬け、味噌樽の底で熟成した味わいが、この塩気と旨味なのでしょう。「味噌屋だからできる仕事」という本宮社長の言葉にも納得です。
 かつて夏の山仕事では、冷たい沢水に浸したご飯をみそ大根で食したとか。さらさらと喉を通る飯粒と大根のカリコリ食感…ああ、またご飯が進みそう…。
■麹屋 もとみや 八幡平市寺志田165‐28(味噌茶屋)電話 0195(72)3663 ※食のほそみち 第9回 マ・シェリ981号(2015年08月28日)掲載

食のほそみち

2014年からマ・シェリに連載中

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