13 釜石雑煮
今どきのおせちは買えますが、お雑煮だけは作る人も多いでしょう。だしの取り方に具の種類、餅の大きさ等々家ごとの味があります。以前こちらにも書いた沿岸地方のくるみだれ雑煮もそんな「家庭の味」ですが、うれしいことに気軽に食べられるカフェが釜石市にあるんです。
「ウチの『釜石雑煮』はかつおだしで、具はごぼうとにんじん。くるみだれは昔のまま、甘さは全然控えていません」。言葉の端々に雑煮への情熱がにじむ「小島かふぇ」オーナーの菊地広隆さんは、釜石の老舗製菓会社の3代目。看板商品のくるみだれは、年末になると釜石界隈のスーパーにずらっと並びます。これが濃厚で甘いのですが、お母様直伝の雑煮はかつお風味が立つひと椀。だしが旨いから甘味に奥ゆきが加わる訳で、いやはや、沿岸の雑煮文化には脱帽です。
大晦日、祖母がくるみを摺って雑煮の準備をする…。ご馳走の陰にはそんな手間ひまがあります。忘れたくないですね。
■小島かふぇ 釜石市大町1‐2‐10 タウンポート大町2階 電話0193(27)8885 ※食のほそみち 第13回 マ・シェリ993号(2015年12月29日)掲載
0コメント