28 けいらん

 カッパやらザシキワラシやら不思議な伝説が今も残る遠野は、郷土食にも独特なものが多いところ。「けいらん」もそのひとつで、こしあんを包んだうずら卵大のもち粉団子が、どういうわけかゆで汁と一緒に供されます。熱々の白湯のなかに沈んでいる純白の団子はどこか品があり、「さすが遠野南部家の城下町は違う」と、つい(?)つぶやいてしまいます。
 気品を生み出すのは作り手の技で、「生地にしわを作らないよう丸めるのが大事」と話すのは、伝承園の食事処で腕をふるう菊池隆子さん。手のひらのきわを使い、コロコロと雫型に丸めた団子はつるんと色白美肌。実にべっぴんです。
 いつまでも愛でていたい卵形ですが、食べるときは湯の中で割るのがけいらんの作法。もっちりした食感と湯に溶け出したあんこの微かな甘みを楽しみ、箸休めの漬け物をポリッと。桜の季節も肌寒い岩手、こんなお花見団子もいいですね。
■伝承園 遠野市土淵町土淵6‐5‐1 電話0198(62)8655 ※食のほそみち 第28回 マ・シェリ1041号(2017年04月28日)掲載

食のほそみち

2014年からマ・シェリに連載中

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