34 ひっつみとはっと

 ひたひたひたと冬将軍の足音が近づいてくる季節、お鍋と同じくらい恋しくなるのが具だくさんの汁物です。ダイコンニンジンゴボウにネギ、ありったけの冬野菜を入れてしょうゆやお味噌で調味した熱々の一杯。豚汁もけんちん汁も大好きですが、粉食文化が残る岩手では小麦粉を練った具が入る「ひっつみ」や「はっと」がおなじみ。ところ変われば出汁も具材の顔ぶれも違って、それがまた食べ歩きの楽しみにもなっています。
 例えば葛巻町の「ひぼがはっと」はひも状の麺がつるつると喉越しがよく、県南でいただいた「はっと」は太くて食べ応えがありましたっけ。沿岸の「小豆ばっと」はお汁粉の中にうどんが入っているような風貌で、食べるとモチモチ感と小豆の甘さが実にいい。一関で食べたモクズガニの出汁仕立ての「かにばっと」、たっぷりの鶏肉が入った二戸の「ひっつみ」もしみじみおいしいものでした。
 冬が近づくたび、思い出すふるさとの味。いつかまた訪ねてみたいと思っています。
※食のほそみち 第34回 マ・シェリ1058号(2017年10月27日)掲載

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